- 糖化と運動
- 運動が糖尿病のリスクを軽減することは広く知られています。同様に、運動が抗糖化対策になることもこれまでの報告で明らかになっております。実際に、同じ年齢のアスリートは、運動習慣のない人とCMLなどの老化物質AGEsの量が21 […]
糖化にまつわるコラム
皮膚における糖化ダメージは、見た目が老化に大きく関連してきます。具体的には「しわ」「たるみ」「ごわつき」「くすみ」「シミ」といったエイジングサインを促してしまうのです。
このことを少し詳しく説明したいと思います。
皮膚における糖化反応の主な舞台は真皮にあるコラーゲンやエラスチンといったタンパク質。これらのタンパク質は半減期が比較的長いのが特徴です。もともと真皮では、コラーゲンに絡みつくようにエラスチンが存在し、それにより立体構造を作っていて、この構造を「架橋構造」と呼んでいます。コラーゲンやエラスチンによる秩序立った架橋構造の隙間には、保湿成分であるヒアルロン酸などがあり、肌の弾力やハリを生み出しているのです。
皮膚に糖化が起こると、架橋結合が無秩序に多く発生してしまいます。それによりしなやかさや弾力性が低下し、「ごわつき」の原因になります。それだけではなく、糖化によるこの異常な架橋結合を異物と判断されて、正常なコラーゲンやエラスチンを分解する酵素が多く分泌されるようになってしまいます。するとコラーゲンやエラスチンの量が減るためハリの低下、ひいてはたるみやシワにつながってしまうのです。
そして最近、「黄ぐすみ」という美容ワードが注目されています。一般的な「くすみ」は血流不良や色素沈着などが原因ですが、黄ぐすみの場合は糖化が大きく関係してきます。黄色い皮膚の犯人は、ここでも「糖化によって変性したコラーゲン」です。糖化反応はメイラード反応とも呼ばれ、タンパク質を褐色に変色させてしまうため、コラーゲンの「機能」だけでなく「見た目」にも影響を与えてしまうというわけです。
それだけではなく、糖化は「シミ」の原因にもなります。シミの原因と言えば紫外線が有名ですが、紫外線による酸化ストレスは、AGEsの生成も促すことがわかっているのです。そしてAGEsはメラノサイトを刺激し、メラニンの生成を促す作用があることもわかっています。つまり、糖化ストレスが高い肌では、紫外線とAGEsの相乗効果でシミができやすい状態であると言えます。これまで、シミ予防=UVケアは広く知られていますが、それだけでは足りず、糖化ケアも必要であるということは今後もっと認知されるべきだと思います。
このように、様々なエイジングのサインのすべてに糖化が関係しています。そして、化粧品を使ったスキンケアでできることは、保湿と日焼け止めといった生活環境に対するケアが中心です。糖化ダメージは生活環境だけでなく、生活習慣からも影響を受けます。そのため、これからのエイジングケアの考え方として、美しい素肌を保つには生活習慣も含めた包括的な糖化ケアが欠かせないと考えられます。
参考文献:
・Dyer DG, Dunn JA, Thorpe SR, et al. Accumulation of Maillard reaction products in skin collagen in diabetes and aging. J Clin Invest. 1993; 91: 2463-2469
・Mori Y, Aki K, Kuge K, et al. UV B-irradiation enhances the racemization and isomerizaiton of aspartyl residues and production of N ε- carboxymethyl lysine (CML) in keratin of skin. J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci. 2011; 879: 3303-3309.