COLUMN

糖化にまつわるコラム

糖化と睡眠

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日本人は海外と比較すると圧倒的に睡眠不足だと言われます。睡眠不足は身体にどう影響を及ぼすのでしょうか。 まず、統計学的に睡眠時間と相関しているのが分かっているのが肥満です。睡眠時間が短いと、肥満になる傾向があります。このことは同じような報告がたくさんあり、紛れもない事実なのですが、それでは睡眠不足が肥満を招く原因は何なのでしょうか。 その鍵を握るのが「インスリン」です。インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモン。肥満の人は、そうでない人と比べて食後の血糖値が上がりやすく、さらにインスリンにも抵抗性を持つ傾向にあります。つまり、肥満の人はご飯を食べた後に「血糖スパーク」が起こりやすく、それによりインスリンもたくさん分泌されるものの、抵抗性があるためにうまく作用せずに食後高血糖の状態が続きやすいのです。これはつまり、糖化ストレスが高い状態です。 一方、睡眠には「メラトニン」というホルモンが関係します。メラトニンがうまく分泌されないと、体内時計がずれてしまい、質の高い睡眠が得られにくいことが分かっています。 さらに、メラトニンが低い人は、糖尿病のリスクが高いことが報告されています。別の報告で、睡眠不足の場合、1日を通して血糖値がスパイク状に高くなる「血糖スパイク」を起こしやすいという報告があり、実際にメラニンを投与することでインスリンの抵抗性や糖の取り込みを改善することも分かっています。メラトニンは老化物質AGEsを分解する作用もある「抗糖化ホルモン」なのです。 まとめると、睡眠不足でメラトニンが不足→血糖スパイク、インスリン抵抗性→糖尿病や肥満のリスク このような流れで説明ができます。   また肥満の人は、睡眠不足だけでなく生活スケジュールが乱れやすい傾向にあります。例えば、
  • 夜更かしが多い
  • 朝ごはんを抜く
  • 夜食を食べる
これらの行動も糖化ストレスを加速させる原因となってしまうのです。   糖化の側面だけでなく、健やかな肌には睡眠は欠かせません。肌の新陳代謝であるターンオーバーは睡眠時に分泌される成長ホルモンによって促されるためです。 寝る前のスマートホンをやめたり、自分にあった枕に変えるなど、良質な睡眠を確保するための工夫も大切です。   参考文献: ・Patel SR, et al. Short sleep and weight gain: a systematic review. Obesity.2008.16,643-653 ・Watanabe M, et al. Association of short sleep duration with weight gain and obesity at 1-year follow-up: A large-scale prospective study. Sleep. 2010.33;161-167 ・Andersson EA, et al. MRNR1B G24E variant associates with BMI and fasting plasma glucose in the general population in studies of 22142 Europeans. Diabetes. 2010; 59(&):1539-48      
 
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