- 糖化と運動
- 運動が糖尿病のリスクを軽減することは広く知られています。同様に、運動が抗糖化対策になることもこれまでの報告で明らかになっております。実際に、同じ年齢のアスリートは、運動習慣のない人とCMLなどの老化物質AGEsの量が21 […]
ブログ
最近話題の「オメガ-3脂肪酸(以下オメガ3)」をご存知でしょうか?なんとなく身体にいいイメージ、くらいしか実は知らないという人も多いのではないでしょうか。今日は青魚などに多く含まれるオメガ3がどう身体にいいのか、最近の論文の報告を踏まえてご紹介したいと思います。
三大栄養素のひとつである脂質は化学構造によって分類されており、二重結合のない(=飽和結合のみ)飽和脂肪酸と、二重結合を有する不飽和脂肪酸の2つに分けられます。不飽和脂肪酸はさらに二重結合がひとつの一価不飽和脂肪酸と二つ以上の多価不飽和脂肪酸に分かれ、二重結合の結合部位によって多価不飽和脂肪酸の中でもオメガ3 、オメガ6に分けられます。この多価不飽和脂肪酸は体内で合成できず、食物によって摂取する必要があるため必須脂肪酸と呼ばれます。
オメガ3の代表的な脂肪酸はαリノレン酸と、サーモンや青魚に多く含まれるDHA(エイコサペンタエン酸)、EPA(ドコサヘキサエン酸)です。厳密に言うと、αリノレン酸の一部からDHAやEPAが合成されます。
これまでの研究によって、オメガ3は血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪を減らし、動脈硬化を予防する効果があることが分かっています。さらにアトピー性皮膚炎や花粉症などの慢性炎症の症状を改善させる他、うつ病やアルツハイマー病のリスクを減らすなどの様々な効果が報告されています。
そして今回、京都大学が青魚に含まれるオメガ3がダイエットに貢献するということを、興味深いメカニズムと供に発表しました。そのメカニズムとは、オメガ3が身体に貯蔵されたいわゆる「望ましくない脂肪細胞」を「燃焼しやすい脂肪細胞」に変換するというものです。
参考文献:MINJI KIM, TEAL; FISH OIL INTAKE INDUCES UCP1 UPREGULATION IN BROWN AND WHITE ADIPOSE TISSUE VIA THE SYMPATHETIC NERVOUS SYSTEM. SCIENTIFIC REPORTS, 2015; 5: 18013
脂肪組織には3種類あり、エネルギー源として貯蓄される「白色脂肪細胞」と体温を一定に保つために代謝される「褐色脂肪細胞」、そして最近発見された「ベージュ脂肪細胞」です。ベージュ脂肪細胞はどちらかというと褐色脂肪細胞と似た働きをするのですが、中年になるにつれてベージュ脂肪細胞の数が減り、代謝能力もなくなり白色脂肪細胞と同様に貯蓄されてしまいます。今回、マウスの実験で魚の脂質を多く摂取したマウスは、白色脂肪細胞からベージュ脂肪細胞が作られ、脂肪を燃焼することにより15-25%の体重減少が認められました。つまりオメガ3には脂肪を燃えやすくしてやせ体質にする効果があるということですね。
皮膚科の観点で言うと、オメガ3にはアトピー性皮膚炎などの炎症疾患の改善や乾燥に対して効果があることが報告されており、患者さんにも積極的におすすめしています。一方もうひとつの必須脂肪酸であるオメガ6はアトピー性皮膚炎に対してはマイナスに働く可能性があります。オメガ6は体内でアラキドン酸に変換され、さらにプロスタグランジンという炎症を惹起するホルモン物質になるためです。
それじゃあできるだけいっぱいオメガ3を摂ればいいのか、と言われると実は必ずしもそういうわけではありません。それはオメガ3が前立腺癌のリスクを増加させる可能性が指摘されているためで、前立腺の腫瘍マーカーが高い方などは注意が必要になってきます。
しかし、オメガ3の摂取量は実際足りていないのです。一般的な欧米化された食事では、オメガ3とオメガ6の割合が1:20と圧倒的にオメガ6の摂取量が多いのが現状です。理想的な割合は1:1〜1:4程度と言われています。
参考文献:FREEMAN MP ET AL; OMEGA-3 FATTY ACIDS: EVIDENCE BASIS FOR TREATMENT AND FUTURE RESEARCH IN PSYCHIATRY. J CLIN PSYCHIATRY 67 (12): 1954–67.
オメガ3を多く含む油として亜麻仁油やえごま油が挙げられますが、これらを毎日大量に摂取することは現実的になかなか難しいのではないでしょうか?しかもこれらの油は非常に酸化しやすいため加熱してはいけません。もう一点注意したいのは、大豆油などオメガ3を多く含むといっても、オメガ3だけではなくてオメガ6や飽和脂肪酸も含むということです。同じ理由で、クルミには確かにナッツの中ではオメガ3が豊富に含まれていますが、実は割合で言うとオメガ6の方が多く含まれています(100gあたりオメガ3が8.9g、オメガ6が41g)。そのためたくさん食べればその分オメガ3:オメガ6の割合がオメガ6寄りになってしまいます。大量に摂取しないように気をつけてくださいね。
おすすめの食材は比較的簡単にオメガ3が摂取できるサーモンや青魚、そして「grass-fed beef(グラスフェッドビーフ)」です。グラスフェッドビーフとは牧草飼育牛のことで、通常の牛肉よりもオメガ3を多く含みます。アメリカのオーガニックスーパーでも最近よく目にするようになっており、日本でも今後トレンドになってくることが予想されます。要チェックです!