- 糖化と運動
- 運動が糖尿病のリスクを軽減することは広く知られています。同様に、運動が抗糖化対策になることもこれまでの報告で明らかになっております。実際に、同じ年齢のアスリートは、運動習慣のない人とCMLなどの老化物質AGEsの量が21 […]
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昔から「腹八分目に医者要らず」ということわざがあるように、食べ過ぎは健康に害が及ぼすことが知られています。日本は飽食世界で、カロリーにも糖分にも飢えることはありません。むしろ食べ過ぎないように常に気をつけていないといけませんよね。さて、今回はアンチエイジングな食事を考えるときにカロリーと糖質、どちらを気をつけた方がいいのか、というお話です。
「カロリー制限」または「糖質制限」というワードは、アンチエイジングよりもダイエットの方が馴染みがある方が多いと思います。以前は、痩せたければカロリーを減らせ、というのが常識でしたが、5年ほど前より「糖質制限」という言葉が少しずつ浸透し始め、それからはカロリーを減らすだけでは意味がない、糖質も減らそう、という考え方が常識になりつつあります。
医者の間でも色々な意見がありますが、私はダイエットを目的とする場合、マイルドな(白ご飯の場合1日で茶碗1杯ちょっと)糖質制限をおすすめしています。その主な理由は
・同じカロリーでも糖質を制限した食事の方が体重が減りやすい
・一方、糖質制限でも厳格な制限では死亡率が上がる
ということが分かっているからです。糖質制限は、ダイエットだけでなく中性脂肪を減らしたり善玉コレステロールを増やしたりとメタボや生活習慣病にも効果がありますが、体重は半年を超えた辺りから減りにくくなり、逆にリバウンドする可能性もあります。そのため、ある程度糖質制限で体重が減った後はご飯などの糖質の量を増やしてカロリー制限にシフトした方がいい、という考えもあります。
次に、アンチエイジングの場合はどうでしょうか。食事とアンチエイジングの研究の歴史では、最初にカロリー制限が注目を集めました。カロリー制限をしたマウスは、制限していないマウスよりも寿命が長く、学習記憶能力も維持されたということが分かったためです。その後の研究で、カロリー制限をすることでアンチエイジング作用を持つ「サーチュイン遺伝子」という遺伝子が活性化されるためではないか、と考えられました。
そのため、長生きしたければやはり腹八分にとどめましょう、という考えに落ち着いたかのように見えたのですが、さらに研究をすすめるとただカロリー制限するだけではだめだ、糖質制限こそアンチエイジングに必要だ、と唱える人も出てきました。
糖質制限をした場合、食後の血糖値が上がりにくくなるため、1日の血糖値変動が少なくてすみます。このことは老化に関係する糖化(私がよく話題にするAGEのことです)や酸化ストレスを抑えることができます。カロリーを量で例えると、量だけでなく質も考えた方がいいということです。私はこの考えに賛成です。
ただ、通常私たちの食事の60%くらいは糖質で成り立っているため、糖質制限をすることで自然と摂取カロリーも減ります。ただ、60%そのままカットすると身体に害が出るレベルに摂取カロリー不足となってしまうため、その分タンパク質や脂質を摂る必要があります。このときに赤肉や加工肉、あるいは脂の多い肉をたくさん食べてしまうと、これらは死亡率や心血管病変、また癌のリスクを高めることが分かっているため、せっかくダイエットやアンチエイジングのためといっても本末転倒になってしまいます。タンパク質は大豆などの植物性タンパク質、脂質はサーモンなどのオメガ3脂肪酸やオリーブオイルのオメガ9脂肪酸など良質な脂質で補うべきです。
結局、カロリー制限と糖質制限のいいとこ取りがダイエットにもアンチエイジングにもいいのではないかな、と思います。アンチエイジングの分野はまだまだ分かっていないことがたくさん。今までの常識が急に間違っている、ということもよくある話なので、注意が必要です。
最後に、写真はエピキュールというパリのレストランでのいただいた桃のデザートです。本当に美味しくて!たまにはノンカロリー制限・ノン糖質制限もいいよ、という意味を込めています(笑)。
参考文献:
Feinman RD, et al: Dietary carbohydrate restriction as the first approach in diabetes management: critical review and evidence base: Nutrition:2105(31)1-13
Monnier L, et al: Activation of oxidative stress by acute glucose fluctuations compared with sustained chronic hyperglycemia in patients with type 2 diabetes: JAMA; 2006(295)1681-1687