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若い人の乳がんが増えている、その原因は?

  • 2016/06/18
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先日、アナウンサーの小林麻央さんが進行性の乳がんで闘病中であることが大きなニュースになりました。32歳で発症ということに驚かれた方も多いと思います。35歳より若い年齢で発症する乳がんを「若年性乳がん」と呼びますが、最近この若年性乳がんが増えていると言われています。なぜでしょう?

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乳がんについては、最近啓蒙運動も盛んに行われていますが残念ながら若い女性ほどあまり興味がないというのが現状のようです。今回は乳がんのリスクファクターについて考えてみたいと思います。

私が学生時代、乳がんの勉強をした時は乳がんの原因は主には遺伝によるものと、女性ホルモンによるものというように教わりました。女性ホルモンに長くさらされている状態、例えば初経が早かったり、妊娠したことがなかったり、閉経が遅い方は比較的リスクが高いと言えますが、他にも乳がんのリスクファクターがあることが最近の研究で少しずつ分かってきています。

それは食生活です。欧米化した食事が乳がんのリスクファクターになっている可能性が指摘されています。もちろんすべての若年性乳がんの原因がそうであるとは言えませんが、若いうちに乳がんにかかる身体的、精神的苦痛を考えると、特に女性の方には具体的にどのような食事が乳がんのリスクファクターになるか、知っておいていただきたいと思います。

まず、「アルコール」です。アルコールが乳がんのリスクファクターになることは比較的以前から知られています。研究によってどれくらいというのは多少違いますが、およそ1日10gのアルコール摂取でも20%程度リスクが上がるという研究があります。10gというのはビールでいうと250mlになります。そしてアルコールの量が増えれば増えるほど乳がんのリスクは上がると言われています。

次に「飽和脂肪酸」です。飽和脂肪酸は主に肉に含まれる脂肪のことで、乳がんだけでなく前立腺がんのリスクファクターにもなります。

よく、脂っぽい食事が乳がんのリスクになる、という話を聞きます。そしてコレステロールを抑えましょう、という話に続くのですが、よく誤解されているのが食事中に含まれるコレステロールが血中のコレステロール値を上昇させる、ということです。実際は食事中のコレステロールは関係なく、それよりも、先ほどの「飽和脂肪酸」、そしてマーガリンやショートニングに含まれる「トランス脂肪酸」が血中のコレステロール値に影響を与えます。

乳がんについてはアルコールや飽和脂肪酸がリスクファクターになるということが医学的に指摘されているものの、結局はこれらは他の病気にも共通のリスクファクターであることは注目すべきことです。

つまり、乳がんだけに特化した「食事療法」というのはナンセンスで、結局は乳がんであれ他の疾患であれ、ヘルシーな食生活が重要なんだ、ということになります。さらに、またの機会でご紹介しようと思いますが、がんだけでなくアンチエイジングにもヘルシーな食生活が関係していることも分かってきています。ヘルシーな食生活とは、以前のブログでもご紹介した栄養バランスのよい日本食がその代表と言えるでしょう。

もちろん、何度も言うように乳がんには遺伝など様々な原因があるため、今回麻央さんが乳がんになった原因が、アルコールやお肉ばかり食べていたから、と決めつける訳では決してありません。しかし、若い女性の乳がんの患者数が増えている背景には、このことは決して無視できない事実だと思います。

少しシリアスな話になってしまいましたが、自分は癌家系ではないから大丈夫、と暴飲暴食ばかりするのではなく、一度自分自身のためにも食生活を見直してみませんか。

参考文献:

Stephanie A, et al; Alcohol and Breast Cancer in Women; A Pooled Analysis of Cohort Studies: JAMA:1998, 18;279(7):535-40

Cao Y, et al:Light to moderate intake of alcohol, drinking patterns, and risk of cancer: results from two prospective US cohort studies: BMJ,2015, 351:h4238. doi: 10.1136

Jung S, et al:Dietary Fat Intake During Adolescence and Breast Density Among Young Women: Cancer Epidemiol Biomakers Prev.2016;25(6):918-26

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