- 糖化と運動
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肌の老化についての質問をよくいただきます。紫外線が肌老化の原因であることはかなり認知されてきた印象ですが、他にも酸化や糖化ストレスなども老化と関係していることも有名ですね。
今日、取り上げたいのは肌老化を大きく左右するにも関わらずあまり知られていない「女性ホルモン」についてです(少し専門用語もあり難しく感じるかもしれませんが、読んで損はないと思います)。
まず、ここでいう女性ホルモンとは「エストロゲン」のこと。エストロゲンはコラーゲンを増やしてハリやツヤを与える効果があることから美肌ホルモンの1つと言われています。エストロゲンは20代から少しずつ減ってきて、ご存知の通り閉経後はガクッとさらに減ってしまいます。あるデータでは閉経直後から5年で30%のコラーゲン量が減ってしまうそうです。そうなると肌はどう変化してしまうのでしょうか。組織学的な変化では
・コラーゲン(Ⅰ、Ⅲ型、およびプロコラーゲン1型)の減少
・ヒアルロン酸などのグリコサミノグリカンの減少
・表皮の菲薄化、萎縮
などがありますが、その他にも水分保持力の低下や創傷治癒力の低下などもエストロゲンが関与していることがわかっています。これらの変化による肌の状態の具体的な変化としては
・弾力性の低下、シワの形成
・乾燥、かゆみ
・創傷治癒の遅延
が起こります。おばあちゃんの肌を想像すれば分かりやすいですね。
では次に、これらの老化現象に何とか抗うことはできないのでしょうか?
まず単純に、減ったエストロゲンを補えば、肌は若返るのではないか?と思いますよね。
ここでその是非については割愛しますが、更年期障害に対してエストロゲンを補充するホルモン補充療法(HRT)というのがあり、実際それによって肌の水分量や表皮の厚みの変化を認めたという報告もあります。ただHRTは様々な副作用がある点も事実で、それならばエストロゲンを経皮的に塗布するのはどうだろう?ということで現在その治験が行われています。
具体的には、MEP(Methyl Estradiolpropanoate)というエストロゲンそのものではなく非ホルモン性のエストロゲン受容体アゴニストの塗布です。ホルモンではないのでHRTのような全身作用なく、基本的に肌のみでその作用を発揮するのが特徴です。このMEPが配合されたクリームを閉経女性60名を対象にランダム化試験を行ったところ、12週間後には副作用なく肌の乾燥、キメ、もたつきなどが改善したと報告されています。組織学的にも真皮層の線維芽細胞の表現が増加していたとのこと。ちなみに写真は上が試験前、下が8週間後です(文献はパブリッシュ未)。化粧品でここまでの変化はすごいですね。
現在は安全性などさらなる追加試験が行われているようですが、これが実現したら本当の意味でのアンチエイジング化粧品誕生なるか??なんだか夢がありますね。ただ、実現するとしても日本の薬機法はどうなのか‥おそらく当面先になると思うので、それまでは運動や食事(イソフラボンやフィトエストロゲン)などでできるだけエストロゲンをキープできるよう頑張りましょう!(詳細は私の著書「皮膚科専門医が教える 40代から始める美肌レッスン」でも紹介しています)
参考文献:
・Archer DF, et al. Postmenopausal skin and estrogen. Gynecol Endocrinol. 2012;28(suppl 2):2‐6.
・Hall G, et al.Estrogen and skin: the effects of estrogen, menopause, and hormone replacement therapy on the skin. J Am Acad Dermatol. 2005;53:555‐68.
・Shu YY, et al.Estrogen and skin: therapeutic options. Am J Clin Dermatol. 2011;12:297‐311.
・Thornton MJ, et al. Estrogens and aging skin.Dermato‐Endocrinology. 2013;5:2, 264‐270
・Draelos ZD. A Double-Blind Randomized Pilot Study Evaluating the Safety and Efficacy of Topical MEP in the Facial Appearance Improvement of Estrogen Deficient Females.J Drugs Dermatol. 2018; 17(11):1186-1189